東京県民の多様な東京スタイル


まず、<鈴鹿・桑名>はご当地B級グルメの「スガキヤファン倶楽部」や同窓高校といった、三重県情報収集のためのコミュニティで構成されている。次に、<伊勢>は伊勢名産の「赤福ラブ!」で「伊勢うどん大好き」「へんば餅」が伊勢出身者らにとっての故郷の味である。「伊勢神宮」を誇りに思い「伊勢志摩の魅力」は計り知れないと、故郷への愛を持っている。<津>は津市情報と津市内の同窓コミュニティを中心に構成されている。他地方同様、常に出身地方の情報に目を向ける三重県民の姿が想像できる。<松坂>は「松坂」情報に加え、松坂地方の同窓コミュニティ群が<松坂>に分類されている。最後に、<四日市>は「四日市弁大好きやに★」「四日市市(全国三重県人会)」と、三重県民のなかで特に四日市に特化するユーザらによって作られる系である。

<三重県民の私>は、三重県全体に関するコミュニティ/三重弁と私語りコミュニティによって構成されている。「お国言葉(三重)」の三重弁を大切にし、それを三重出身としての核に据えている。また「東京在住三重県出身!!」「気軽にマイミクOKな三重県の人」のように、三重出身者であることを表現しつつも集うことはせず、岩手県民同様あくまでmixi上での繋がりに過ぎない傾向が見て取れる。加えて「そこそこの予算でお洒落を!!」「かまって病」のように私語りのコミュニティ群と入り交じっての系であることから、三重弁も三重出身もアイデンティティ表現のひとつであることが想像できる。

三重県民の内面を表すのは<甘えんぼの私>である。三重県民は「二度寝常習犯」で「アレやるとコレ忘れる」、少し抜けた所のある自分の内面を吐露している。しかしそれは「名前覚えられません」「すぐ緊張します」な彼らがうまく対人関係を構築するための隠れ蓑であり、東京ライフにおける対人関係を円滑にする知恵であろう。

三重県の東京<県民>スタイルは、各地域情報に分化した親密圏と自由圏への分化を、全体の核となる自由社交圏が結合するパタンである。東京に暮らす三重県民は自由圏への特化から明らかなように<甘えんぼの私>であることに自覚的である。一方親密圏に示される通り、<津><伊勢>といった出身県各地方の情報をネットでしっかりチェックする。しかし、甘えんぼで出身地ばかりに目を向け閉じこもっているのが三重県民ではない。彼らは東京に生きる生活者としての<三重県民の私>のあり方を、自由社交圏に位置するネットワークコミュニティを通じて行っているのである。三重県のスタイルは、親密圏と自由圏が自由社交圏によって結合される東京<県民>スタイルの一例である。