東京県民のネット県民スタイルとは、mixiユーザ全体と東京県民との間で共有された31のコミュニティから解釈されるライフスタイルである。これは、表2に示される7つの系から成り、さらにその系は身近な社会的関係性を軸に構造化され、東京県民に似合ったスタイルを明確に語っている。
第1に、東京県民は<お気楽な私>を肯定する。「睡眠が好き。」で「よく物をなくす」、そんなダメな私も悪くはないかも、とあっけらかんと生きる。だから「期限ギリギリまで行動できない」のに、いつも「なんとかなる。」と信じる。一方「痩せる」にはほんの少し頑張るが、それも「なにかいいことありますように」という期待へのオマジナイのようなもので、最後は「幸せはいつも自分の心が決める」という明るいハッピーな信念に生きる。
第2に、東京県民は<やっぱスタバ>である。地方から夢や希望を背負って上京した東京県民は、東京もまた生活の地であることを実感する。その結果が「ラーメン大好き」で、「ヴィレッジヴァンガード」でサブカルをみつくろい「スターバックス」で読書というライフスタイルに反映されている。
第3に、東京県民は<心はダンク>を支えに生きる。上京しワンルームの部屋で、心の支えはやはり「SLAMDUNK」で、時にうまくいかないことがあれば「人志松本のすべらない話」でストレスを解消する。さらに東京県民は「空を見る人」、遠く離れた土地と繋がる空を見上げては、ウェブで見つけた「心に響いた名言集」を思い出し、明日も頑張ろう、と前向きになる。
第4に、上京という友人との別れを経験している東京県民にとって<友達は財産>である。だから「思いやる気持ちを大切に」というポリシーを持ち、いつだって「相手を喜ばせたい」と考える。「がんばってる人が好き」なのは当然で、なぜなら彼ら自身が日々東京で頑張っているからである。そして「笑顔がカワイイ人が好き」で「手をつなぐのが好き」と言える素直さが<友達は財産>を支える。
第5に、東京県民の生活は<簡単レシピ>に支えられる。慣れない自炊に迫られたとき、mixiユーザの彼らはソリューションもまたmixiに求める。王道の「素材別簡単おいしい料理」を調べるだけでなく、「早い、簡単、旨い料理」のお得情報をしっかり収集する。東京の地で汗を流す彼らは、忙しいから簡単でおいしい料理を求める。
第6に、東京県民は<いつもYouTube>、つまりテレビより断然YouTubeである。彼らはかつての孤独な群衆として淋しくTVを眺めるサイレントマジョリティではなく、iPhoneやPCを駆使して友達とリアルタイムにコミュニケーションをしながらYouTubeを楽しむおしゃべりなロングテールである。「mixiで使える絵文字」は、そんな彼らのコミュニケーションに不可欠なツールである。
第7に、そんな彼らだが結局は<ミスチルがいい>。もちろん「音楽がないと生きていけない」し「おすすめ洋楽」を探すことにも熱心だが、やはり王道は外せない。それは「Mr.Children」が友達と感情を共有する極めて優れたメディアだからだ。上京し友達ができたとき、ワンルームの部屋の中やドライブ車中で、ともに楽しめるのはやはり「Mr.Children」なのだ。
このように、ネット県民スタイルは7つの系から構成される。まず、<お気楽な私>は、<簡単レシピ><やっぱスタバ><ミスチルがいい><いつもYouTube>の4系の確信度差が最大であり、核となる存在である。これら4系は<お気楽な私>の自分らしさのライフスタイルをさらに具体的に表現する系であり、<簡単レシピ>でそつなく料理をこなし、多忙な中でも好きなコンテンツは<いつもYouTube>でフォロー、実生活は<やっぱスタバ>でいいかと納得し、音楽は<ミスチルがいい>と実感する。そんな日常生活を過ごす東京県民が<お気楽な私>である。
だが、東京県民は孤独ではない。なぜなら<お気楽な私>は<友達は財産>と相互に強く連関し合っているからである。一人ならば<お気楽な私>だが、対人関係において東京県民は<友達は財産>だと考え、大切にする。しかも<友達は財産>をフォローするのが<心はダンク>であるから、意外と熱い友情を大切にしている情景が浮かんでくる。このような関係性を発見すると、かつての上京者に見られる孤独な群衆のイメージからは程遠い。一人だから淋しいのではなく、かえってのんびりしてお気楽でいいと思い、かといって一人で部屋に籠りテレビを眺めるのではなくネットも含めスタバやラーメン屋で身近な友達とそこそこに慣れ親しんだコミュニケーションを楽しむ姿が想像できる。それがネット県民のライフスタイルであり、マスメディア時代の孤独な群衆ではなく、ネットワーク時代に典型的なおしゃべりなロングテールのスタイルである。